方丈記に、似た運命

― 懐かしい古典が、今、蘇る ―

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教科書の中の鴨長明

鴨長明と言えば、方丈記の作者として有名な人物。
学生時代には、必ず、方丈記を習う。
僕も習った。
で、この方丈記だけど、日本三大随筆としても有名だったりする。
随筆ということは、いまでいうエッセイ。

ちなみに、日本三大随筆について簡単に書くと、次のようになる。

枕草子 方丈記徒然草
成立年  996年 
 平安時代 
 1212年 
 鎌倉時代 
 1330年 
 鎌倉時代 
作者 清少納言 鴨長明 兼好法師
 ひと言で   平安美・をかし   無常観・自叙伝   無常観・説話集 
あだな 枕の掃除 特になし つれづれグソ

方丈記だけど、とにかく、出だしが有名な作品。
しかも、とても表現がすばらしい。
学校の授業でも、先生がべた褒めだった。
名文中の名文。
で、僕も、よく分からないままに「方丈記=出だしがすばらしい作品」と思っていた。

一応書くと、出だしは次のとおり。

【原文】
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。世の中にある人と棲と、又かくのごとし」

【訳】
川の流れは絶えることなく、そこに流れる水はいつも入れ替わっていて、ずっともとの水がとどまるということはない。淀みに浮かぶ水泡は、消えたかと思うとすぐに別の水泡ができたりして、ずっと同じ水泡がそこにとどまるということはない。そして、世の中の人間と家も、それと同じである。

それで、学生時代だと、これを無条件で暗記させられるわけ。
まー、これぐらいなら暗記できるから良かったけど。

それでね、試験だと、

「冒頭の文章で、作者が言いたいことを漢字四文字で書きなさい」

なんて問題があるわけ。
答えは「諸行無常」なんだけど、これなんかもセットで覚えたものだった。

「方丈記=無常を書いた作品」

という公式も無条件で覚えたものだった。
そして、試験が終わると、きれいに忘れるのね。

だいたいね、中学生や高校生に「諸行無常」が分かると思う?
無理だって。
そりゃーさ、辞書を引けば、諸行無常なんていくらでも書いてあると思うよ。
でも、それを読んで、どこかに突き刺さる?
絶対に突き刺さらない。

方丈記だけじゃないけど、だいたい、古典の授業の内容は、試験が終わると消えてしまう。
今風にパソコンで言えば、試験終了と同時に

「方丈記のデータを削除しますか?」
 ↓
「はい」
 ↓
「方丈記のデータを削除しました」

といった感じ。

次に、作者である鴨長明について。
学校では、「すぐれた歌人」と習った記憶がある。
あと、先生によっては、「えらいお坊さん」と習ったようにも思う。

ひと言で言うと、「偉い人」。

だいたい、これほどの作品を書くのだから、偉い人だとみんな思っている。
ほとんどの人は、鴨長明のことを、

・身分の高い貴族
・悟りを開いた高僧
・人生を達観したお坊さん

みたいに思っている。

で、確かに、半分は正解か。
鴨長明は、身分は低いけど、間違いなく貴族の部類に入っていた。
わずか7歳で、朝廷から従五位下の官位をもらっている。

悟りも開いたと思う。
そして、僧侶としての地位は分からないけど、立派なお坊さんだったと思う。

ちなみにだけど、鴨長明の「鴨」は「下鴨神社」の「鴨」。
下鴨神社といえば、京都にある、今でも立派な大きな神社。
鴨長明は、その下鴨神社という名門社家の子。
お父さんは、下鴨神社の正禰宜惣官を務めた鴨長継。
つまり、すごい家系に生まれたのね。

で、こういう風に書くと、「鴨長明って、やっぱり偉い人なのね」となる。
でも、実際は、そうでもなかった。
むしろ、ダメ人間。
古典の教科書に載るほどの人物だけど、ダメ人間だった。

僕も、最初、これを知った時は驚いた。
もし、ダメ人間が言い過ぎなら、まーまーのダメ人間でもいい。

方丈記を読むと、そういったことも書いてある。

・私の人生は、運がない。
・一生懸命生きたけど、まともな人生を歩むことができなかった。
・何もかも捨てて仏教に生きたけど、全然ダメだった。

そんなことが書いてある。

とにかく、この方、人生の転落ぶりが半端じゃない。
そして、方丈記を全て読み終わる頃には、鴨長明が遠い過去の人ではないことが分かる。
現代人と同じように毎日を悩みながら生きたことに、とても親近感がわくと思う。

というわけで、ここからは、(僕が思う)真実の鴨長明に少しずつ迫っていきたいと思います。

一応だけど、僕が、この文章を書くにあたり、参考にした文献を書きます。

・方丈記 角川ソフィア文庫(武田友宏)
・方丈記 ちくま学芸文庫(浅見和彦)
・方丈記 光文社(蜂飼耳)
・ウィキペディアをはじめインターネットの鴨長明に関するサイト
・方丈記 100分de名著(NHK教育テレビ)
・その他

今回はこの辺で。

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