方丈記に、似た運命

― 懐かしい古典が、今、蘇る ―


バーナム効果

今回は、バーナム効果について。

バーナム効果というのはアメリカの心理学者・バートラム・フォアが提唱した心理学の法則。
で、これが、どういうものかと言うと、

「誰にでも該当するような一般的な性格を表す内容を、自分にだけ当てはまると思ってしまう心理学の法則」

といった感じになる。

乱暴に言うと・・・
「あなたって、社交的な時もあるけど、内向的な時もあるよね」って言われた時に、「当たってる」って思うこと。
で、この人、「私のこと、よく知ってる」って勘違いする。
で、相手のことを好きになったりする。

違うから。
全く違うから。
「社交的な時もあるけど、内向的な時もある」って、みんなそうだから。

で、こういうのが、バーナム効果。
で、ここからは、バートラム・フォアの実験を見ていく。

バートラム・フォアは、あらかじめ、学生に対して、心理検査をする。
その後、その心理検査とは全く関係のない、デタラメの検査結果を「今回の心理検査の結果です」と言って見せる。
もう一回書くけど、その検査結果は、デタラメの検査結果。
つまり、当たるはずがない。
ていうか、こんなデタラメが当たってたまるかって。

で、実際、そのデタラメの検査結果を見せられた学生が、どう感じたかと言うと・・・

「当たってる」

だった。
しかも、どのぐらい当たっているかを5点満点で評価してもらった。
すると、出てきた得点は4.26。
だいぶ高かった。

もう一回書くけど、その検査結果は、心理検査とは関係のないデタラメの検査結果だから。
にもかかわらず、ほとんどの学生が「当たった」と感じた。
うーん、どういうことなのか?

で、デタラメの検査結果に書かれてあったこと。
その内容が、これ↓

・あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、それにかかわらず自己を批判する傾向にあります。
・また、あなたは弱みを持っているときでも、それを普段は克服することができます。
・あなたは使われず生かしきれていない才能をかなり持っています。
・外見的には規律正しく自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります。
・正しい判断や正しい行動をしたのかどうか真剣な疑問を持つときがあります。
・あなたはある程度の変化や多様性を好み、制約や限界に直面したときには不満を抱きます。
・そのうえ、あなたは独自の考えを持っていることを誇りに思い、十分な根拠もない他人の意見を聞き入れることはありません。
・しかし、あなたは他人に自分のことをさらけ出しすぎるのも賢明でないことにも気付いています。
・あなたは外向的・社交的で愛想がよいときもありますが、その一方で内向的で用心深く遠慮がちなときもあります。
・あなたの願望にはやや非現実的な傾向のものもあります。

で、これを読んだら、よく分かる。
これらの文章、とても曖昧な文章。
だから、誰にでも当てはまってしまう。
YES、NOで言うと、全部「YES」で答えられるものばかり。
むしろ、この文章を読んで、「自分には当てはまらない」っていう奴がいたら、見てみたいぐらい。

だから、学生たちが、これを読んで「当たった」と思うのも分かる。
むしろ、自然かもしれない。

ただ、だとすると、おおもとの心理検査はどうなるんだろう?
だって、この検査結果は、心理検査とは全くの無関係なんだから。
「心理検査から、どうやってこの検査結果が出たんですか?」と突っ込んだ人、いなかったのかな。。。

このバーナム効果だけど、

・本人がその分析は自分にだけに適合すると信じている
・本人が評価者の権威を信じている
・分析が前向きな内容ばかりである

の場合に、その効果が高まるらしいのね。
だとすると、心理検査とその結果の関連性について、突っ込む人もいなかったのかもしれない。

このバーナム効果、色々な場面で使われているらしい。
すぐに思いつくところで言うと、占い。
実際、バートラム・フォアの実験でも、デタラメに書かれた検査結果は、星座占いの文章だった。

で、次に思いつくのがビジネスとかコマーシャル。

例えば、車の営業。

・燃費が良い方が良い。
・安全性が高い方がいい。
・子どもがいるなら、車内空間も広い方が良い。

なんてことを営業マンと話しながら、「それならこの車がおすすめ」なんて言われる。
でも、これって、みんなそう思っている。
しかも、最近の車だと、だいたいこのあたりの基準は満たしている。

つまり、いかにもお客さんに当てはまるような文句を言いながら、買わせたい車を買わそうとしているだけ。
そもそも、営業トークなんて、誰にでも当てはまる一般論の集大成。
どこを投げてもストライクになるようなボールしか投げてこないんだから。

次に、コマーシャルの場合。

・最近だるい
・最近疲れやすくなった
・ぐっすり眠れない

といったことはありませんか?と聞いてくるものがある。
そして、「そんな方にはこれ!!」と言って、商品がドドーンと出てくる。

いやね、これ、みんなに当てはまるから。
これに対して、「自分は違う」って言う人、いないから。

しかも、この手のコマーシャルの場合、

・今なら、〇〇をサービス
・今なら、1か月分を無料
・今から30分間、オペレーターを増やして、お電話お待ちしています。

なんて続くパターンが多い。
もうね、今まで僕が書いてきた心理学の法則が、ずっしり詰め込まれている。

こうして書いていくと、バーナム効果って、あまりイメージが良くない。
結局、みんなが当てはまることを言って、「当たったー、当たったー」って言ってるだけじゃないかと。
まー、僕だけかもしれないけど。

ただ、バーナム効果と言うのは、誰にでも当てはまる。
だから、見方によっては、みんなとつながることができる不思議な効果かも知れない。
昔、河合隼雄が、日本人の感覚として「関係を切らない」というのがあると言っていた。
そして、日本人にとって「つながっている」というのは「愛する」ことと同じだと。

で、バーナム効果をこういう立場で捉えるなら、単に営利目的の場面だけで有用な効果ではなく、人間どうしの潤滑油的な効果もあるのかもしれないと思ったけど、まー、ちょっと飛躍し過ぎか。。。

今回はこの辺で。

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