方丈記に、似た運命

― 懐かしい古典が、今、蘇る ―


アルバイトの初歩②

前回からの続き。

●アルバイト先で罰金制度がある場合
例えば、アルバイト先でお皿を割ったら罰金一万円というところがあるかもしれない。
今回は、これについて労働基準法から考えてみる。

まず、労働基準法では、労働者が会社に対して損害を与えた場合、会社が損害賠償をすることは問題ない。
但し、いくつかクリアーする問題がある。
一つ目は、損害賠償額の予定は禁止されているということ。
つまり、損害の程度に応じた損害賠償は問題ないけど、「お皿った場合は、罰金一万円とする」という風に、予め損害賠償の額を定めることは違法となる。

二つ目は、お皿を割った責任を、労働者本人だけに負わせるのかということ。
例えば、飲食業の場合だと、お皿を割ることは比較的よくあることだと思う。
よっぽどのことをしたら問題だけど、ふつうに想定される範囲内でのミスは仕方がない部分もある。
また、会社の社員教育や管理方法も問われることになる。
もちろん、初めてお皿を割って、いきなり罰金一万円も常識的ではない。

以上をまとめると、お皿を割ったとしても、口頭・文書での注意が妥当かなと。
仮に、何回も繰り返す場合でも、会社にも管理責任があることを考えると、その請求額は折半で2割~3割あたりが妥当ではないか。

ちなみに、会社が、罰金を給料から天引きするところもあるかもしれないけど、これも労働基準法違反となる。
給料は、通貨で、直接労働者に、全額を、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されている。
また、罰金としてではなく制裁として「制裁金○○円」とある場合もあるかもしれないけど、制裁を科す場合も労働基準法で定める基準をクリアーしないと制裁を科すことはできない。

裏ルールで罰金制度があるところもあるかもしれないけど、労働基準法上は、かなり厳しく制限されているわけね。

●扶養について
パート・アルバイトをすると「扶養」の問題が出てくる。
「扶養」であって「不要」ではないので、念のため。
扶養と言うと、多くの人は「健康保険」の被扶養者のことを思い浮かべると思う。
しかし、扶養というのは、税法にも扶養という概念があるのね。
つまり、扶養という概念は、健康保険と税の二つある。
ちょっと紛らわしいんだけど。。。

それで、パート・アルバイトの場合の扶養は、税法上の扶養が重要となってくる。
一つは、税法上の扶養(パートの年間収入が103万円以内)に入っていると、本人が所得税を取られないし、夫が取られる所得税も少なくなる。

また、多くの会社では、家族手当が支給されていると思うけど、この家族手当の支給要件が「税法上の扶養であること」としている会社が多い(と思う)。
仮に、家族手当が毎月1万円だとすると、妻が税法上の扶養の範囲でパートをしていたら、夫は毎月1万円の家族手当をもらえる。
これはけっこうでかいと思う。

扶養については、健康保険と税、家族手当が絡んでくるということを覚えておくと良いことがあるかもしれない。
妻が主婦(主夫)でパートの場合だけど。。。

●アルバイト代が手渡しの場合
僕が、学生だった頃は、アルバイト代が手渡しということもあった。
今だと、手渡しというところは、どうも何か怪しいと思ってしまうこともあるらしい。
まー、分からないでもないけど。。。

ただ、労働基準法では、給料の支払いについてなんて書いてあるかというと、給料は、通貨で、直接労働者に、全額を、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されている。

そう、直接労働者に支払うと書かれてあるので、実は、手渡しって大正解なわけ。
大した話じゃないけど、一応参考までに。

●アルバイトでも労災保険は使えるのか?
たまに、
・うちの会社では、労災保険はないから
・アルバイトは労災保険使えないから

という会社があるらしい。

でも、これってウソだから。
確かに、脅し文句でこう言う会社はあると思う。
僕が、以前勤めていた会社でも、こういうことを言う上司がいた。

アルバイトでも、ちゃんと労災保険は適用される。
そもそも、労災保険は、事業所単位で加入するものなのね。
だから、その事業所で働く労働者であれば、アルバイト、パート、正社員の区分に関係なく労災保険を使うことはできる。
会社によっては、「そんなんで労災が使えると思うなよ」って言うところもあるけど、労災保険が使えるかどうかは労基署が判断するのであって、その会社が判断するのではない。

●労働基準法上は問題ないから
これも多くの人が勘違いしていることだと思う。
たまに、会社が就業規則や暗黙のルールを改定(改悪)することがある。
で、「労働基準法はクリアーしているから問題ない」という。
確かに、労働基準法上、問題ないと言われたら引き下がるしかない。

ただ、労働基準法には、次の条文がある。

この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。(第1条第2項)

具体例で説明してみる。
ある会社の一日の労働時間が7時間半だとする。
で、ある日、その会社が、「労働基準法では一日の労働時間は8時間までは認められているので、当社の一日の労働時間も8時間とする」といった場合。

この場合、ぎりぎりだけど労働基準法を満たしているので、セーフのようにも思える。
でも、労働基準法では、法律を根拠として労働条件を引き下げることは禁止されているので、この場合の労働条件の変更(低下)は許されないとなる。
一応書くと、一日の労働時間を8時間にしないと、競合他社に太刀打ちできずに会社経営が危なくなるなど、正当な理由があれば、労働条件の低下は問題ない。

このあたりは、労働基準法が労働者の保護を目的としていることに由来するんだけど、ふつーはここまで気にしないけど。。。

●体調不良で休む時に、代わりをを見つけるように言われた場合
これも、たまに聞くことがある。
体調不良でも何でもいいけど、とはいっても単にさぼるのが目的ではダメだけど、急に休むことがある。
それで、連絡を入れると、店長から「代わりを見つけるように」と言われる。
でも、代わりの人間を用意できずに、体調不良のままアルバイトに行くという場合がある。

確かに、自分の体調不良でシフトに穴を開けてしまうので、自分が何とかしないといけないと思ってしまう。
しかし、アルバイトは、単に労働力を提供するだけで、そこまでの責任を負うことはない。
シフトを組んだり、緊急対応をするのは、お店側の問題。

こういう場合は、自分では代わりを用意できない旨をうまく説明して、今後は気を付けますと言うことでお店側に理解してもらうしかないだろうけど。
ちなみに、僕が学生時代には、こんな話を聞いたことがなかったけど、これも時代だろうか。。。

●所得税が引かれている場合
アルバイトやパートの場合、その収入が103万円以内の場合、所得税は引かれないことになっている。
ところが、実際には、引かれている場合もあるらしい。
ネットを見ていても、「103万円以下なら所得税はかかりません」、「毎月、所得税は引かれます」と書いてあったりする。
もーね、どっちが正しいのか分からなくなる。

結論から言うと、103万円以下なら所得税はかからない、が正解となる。
仮に、毎月、所得税が引かれていたとしても、あくまでも月々の所得税は速報値であって確定値ではないのね。
確定値は、年末調整で出された所得税が確定値となる。
だから、仮に毎月、所得税が引かれていたとしても、年末調整でちゃんと戻ってくるので心配しなくて大丈夫。

今回はこの辺で。

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