方丈記に、似た運命

― 懐かしい古典が、今、蘇る ―


ユング心理学①

今回からは、深層心理学について。
で、今回は、ユング心理学。

ユング心理学というのは、カール・グフタス・ユングが提唱した心理学のこと。
分析心理学と言われたりもする。

正直、僕も、詳しいことはないけど、大学時代に少しかじったことがあった。
で、当時、ユングと共時性という本を参考図書として紹介されたけど、今でもその本は家にある。
今でも、たまにだけど、読むこともある。
学術書なので、面白くはないけど。

それで、ここからは、ユング心理学について以下の3つのポイントについて書きます。
あくまでも、僕の独断と偏見だけど。

●集合的無意識
●コンステレーション
●共時性原理

●集合的無意識
もともと、無意識を発見したのは、フロイトなんだとか。
無意識を発見したといっても、無意識の概念を導入したといった方がいいかもだけど。
それで、無意識については、ユングも研究していた。
で、ユングは、フロイトと共同して、無意識を研究することになる。

そもそも、この二人の関係は、師弟関係だった。
フロイトが師匠で、ユングが弟子。
歳の差も、親子ほどの違いがあった。

で、最初は、二人の関係は良好だった。
ところが、無意識に対する考え方の違いから、ユングはフロイトのもとを去る。
そして、独自の理論で心理学を研究する。
その結果、ユングが提唱したのが「個人的無意識」と「集合的無意識」というもの。

個人的無意識と言うのは、僕たちが、ふだん、ふつうに無意識と言う場合の無意識。
「ごめん、今の無意識だった」とか言う時の無意識。
これについては、特に説明はいらないと思う。
それで、フロイトが言う無意識も、これを指すんだとか。

問題は、集合的無意識。
普遍的無意識とも言うらしいけど。
むしろ、こっちの方が、訳としては正しいような気がしないでもないけど。
そもそも、無意識が集合するとはどういうことか。

この集合的無意識だけど、ちょっと難しい。
僕も、初めて聞いた時は、よく分からなかった。
これ、意味としては、多くの人に共通して見られる無意識ということらしい。

ユングは、フロイトのもとで無意識について研究していた。
ところが、フロイトの理論による無意識だけでは、どうしても説明がつかない事象が起きる。
患者さんをカウンセリングしていると、複数の人から似たような話を聞くことがあった。
それはなぜなのか?

で、ユングは考えた。
もし、意識・無意識がその人個人のものなら、ここまで似たような話が出るはずがない。
ところが、実際は、まーまーの割合で似たような話が出てくる。
無意識の中に、個人の無意識とは別に、何か他人と繋がるような無意識、他人と共通するような無意識が働いているのではないか。

それで、ユングは、世界の文化について調べてみた。
例えば、世界各地に似たような神話があったりする。
また、世界各地で似たような行為(太陽や月に対して手を合わせるとか)がある。
ピラミッドなんかでも、世界各地で似たようなものが存在している。

と、まー、そんなことに気が付いたらしい。
それで、ユングは、個人的無意識よりも深い層に、人間(集団、民族、人種、地域など)に普遍的な無意識が存在するからではないかと考えたんだとか。

また、ユング自身も、次のような体験を語っている。

ユングは、精神的に相当病んでいた時期があった。
で、その時に、ユングは、意味もなく紙に円を書くことがよくあったらしいのね。
ただ、ユングは、自分がなぜ円を書こうとするのかが分からなかった。
とにかく、気が付くと意味もなく円を書いていたらしい。

ところが、ある日、ユングは、仏教の曼陀羅の絵を見る。
で、その瞬間「これだ!」と思ったらしい。
どうやら、ユングは仏教の曼陀羅を書きたかったらしい。
ところが、ユングは曼陀羅なんて知るはずもなかった。

それで、ユングは、なぜ自分が曼陀羅を書こうとしたのかその理由を考えるんだけど、分からないわけ。
でも、無意識の内に曼陀羅を書こうとしたのは事実。
ただ、それまでの人生で、ユングには曼陀羅と交差するような体験がなかった。
そこで、ユングは、自分では分からないけど、自分は仏教の曼陀羅とどこかで繋がっていた。
それが、「個人的無意識」よりも深い層である「集合的無意識」ではなかったと考えたんだとか。

まー、だいたいこんな話を残している。

で、このあたりは、ユングの特色だと思うけど、ユングは「つながり」ということを重視している。
あるいは、関係性というか。
とにかく、人間は、意識(無意識)の中で、他人と繋がっていると。
まー、証明はできないけど。

●コンステレーション
コンステレーションというのは、聞きなれないフレーズだと思う。
これ、意味は星座。
夜空を見上げると、色んな星が見える。
例えば、カシオペア座、オリオン座、北斗七星、ふたご座などと色んな星座がある。
でも、こういった星座は、別に繋がっているわけではない。
地球から星を眺めて、その星の集まりを「あれは○○座」などと勝手に言っているだけに過ぎない。

ただ、ユング心理学では、このコンステレーションというのを重要視するらしい。
つまり、一見、バラバラに見えるいくつかの現象について、それをぼんやりと見てみる。
すると、全体として何か見えてきませんかということらしい。
つまり、あなたは、今のその状況をどう読み取りますか、ということ。
これについては、ユング派の臨床心理士である河合隼雄が次のように語っている。

河合隼雄が臨床心理士としてカウンセリングをしていた時のお話。
ある学生が河合隼雄の研究室を尋ねてくる。
その学生は、切羽詰まった感じだったそう。
その学生は、河合隼雄に「先生は、占いを信じますか?」と質問をする。

河合隼雄が、その学生の話を聞くと、その学生は在日韓国人だった。
で、いつか祖国である韓国に行ってみたいと思っていたところ、ついに韓国に行く機会が訪れる。
で、その学生は、期待に胸を膨らませていた。

その学生、普段は全くそんなことしないのに、その時に限って易占いをしたところ「高みにのぼって落ちる」と出たんだそう。
それで、その学生は、とっさに「自分の乗る飛行機が落ちる」と思ったそう。
これが、この学生が考えるコンステレーション(読み)となる。

その学生は、その後、何回か河合隼雄とお話をする。
どれだけ自分が祖国に戻ることを楽しみにしていたか、韓国や韓国人がどれだけ素晴らしいか、向こうではこんなところに行きたいとか、誰々に会いたいなどといった話をしたみたいだけど、その内、向こうの人は自分のことを受け入れてくれるだろうかとか、実際に行ってみて大したことなかったら残念に思うといったことを考えていたらしい。

それで、河合隼雄は、この学生に「易占いは当たりましたね」と言う。
この学生は、韓国をとても素晴らしいところ(高み)だと考えていた。
ところが、河合隼雄との話の中で「もし、韓国が自分の思っていたのと違うこともあるかもしれない」と考えることで、前のめりにならずに地に足を付けて韓国に帰ることができたそう。
そして、これこそが、河合隼雄のコンステレーション(読み)となるのね。

今回はこの辺で。

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